この問題について、米国務省のジェン・サキ報道官は26日、タイの政争で米国は中立的な立場をとるとしつつも、「タイでの投票の妨害行為に米国は深く悩まされている」、「表現の自由や平和的な抗議の権利を強く支持するが、市民が投票する権利の妨害は普遍的な権利の侵害で、民主主義の価値と適合しない」と述べ、反政府デモ隊を批判した。
今回の反政府デモは反タクシン元首相派の野党民主党が主導し、民主党の地盤で、タイ国内で所得や教育水準が比較的高いバンコクと南部で起きている。デモの目的はタクシン元首相の汚職利権構造の排除、タクシン派インラク政権の打倒、総選挙の阻止、超法規的な新政権の設立、政治改革などで、バンコクの主要交差点を占拠したり、政府庁舎を封鎖するなど、非合法、非民主的な手法、主張が目立つ。こうした主張を、一流国立大学の教員の大半が支持するなど、インテリ層が支持していることがタイの特徴だ。
デモ隊側の法治、民主主義に対する意識は総じて低く、政治改革の具体的な内容や達成方法もあいまいなまま。選挙の阻止や非民主的な政権発足を掲げるデモに対し、欧米メディアの多くは批判的だ。タイの有名大学教授らデモの支持者はこうした報道に対し、「タイと外国は違う」「外国人はタイのことをわかっていない」などと反発している。
こうした現象は、インテリ層の間でタイ王室への敬愛が強く、王室に敵対するとされるタクシン元首相の排除に一種の宗教的情熱が沸き上がっていることが原因とみられる。また、タイが植民地支配を免れた結果、前近代的な制度、意識が残り、タクシン派と反タクシン派の政争や、非理性的、非論理的な「インテリ層」を生む原因となったという見方も浮上している。
(記事は1月28日付けBeClipより転載いたしました)
(写真はアソーク交差点を封鎖し、気勢を上げるデモ隊)