ソムチャイ:タイの公立病院はお金があったら、行きたくないですね。
五郎:何で?治療の質が良くないから?
ソムチャイ:それもありますけど・・・、患者を患者と思っていないような病院もありますから。
五郎:でも、治療はしてくれるんだろう?
ソムチャイ:私の甥が、まだ20歳にもなっていない頃のことですけど、
バイクに乗っていて、交通事故起こしました。自分で転倒したんです。
頭を強く打っていて、顔は血だらけだったそうです。
五郎:大ケガだね。
ソムチャイ:そうなんです。すぐに手術しないとならないほど大変な状態だったそうです。
五郎: ERかなんかに入ったのかな・・・?
ソムチャイ:廊下のベッドに寝かされて、親が呼び出されたんです。
「手術するかどうか?」って。「手術すれば助かるけど、しなければ命の保証はない」って。
五郎:両親はびっくりしたろうね。
ソムチャイ:びっくりしたのは子供の命のことより、お金を催促されたことでした。
五郎:何もしてないのに?
ソムチャイ:「手術と入院費用で3万バーツ掛かるけど、お金を持ってくれば手術する、なければしない」
ということで・・・、正直言って私の義兄はトラックの運転手で収入が少ないんです。お金がない。
子供は助けたい、手元は不如意。
で、私に電話してきました。「助けてくれ」って、「子供の命を救ってくれ」って。
五郎:辛い話だね。
ソムチャイ:「出せない」なんて言えますか?
銀行から病院の口座にお金を振り込みました。
五郎:それで、甥子さんはどうなったの?
ソムチャイ:手術はうまくいって、2週間くらいで退院しました。
顔にかなり大きい傷が残ったのと右腕は少し不自由になりました。
本人が一番心配していたのは後遺症で言葉がうまくしゃべられない、ということでした。
本人とお母さんがお礼の挨拶に来て、涙を流されました。
命の恩人だと言われちゃいました。
五郎:で、お金はどうなったの?
ソムチャイ:それっきりです。返してはもらっていませんし、「命の恩人だ」といわれれば
返してもらう訳にいかないです。