ソムチャイ:この10年で様変わりしたのはファーストフードの店が増えたことです。
ケンタッキー、マクドナルド、ウェンディーズ、ダイキンドーナツ・・・
ファーストフードの店に事欠きません。どこの店も繁盛しています。
デパートには必ずテナントで入っています。子供が行きたがりますし・・・。
ちなみにマックは全国に90店舗あります。最近3年ほど出店を控えていたそ
うですが、「マック・タイ」の全株式をウィチャー氏(メジャー・シネプレックスCEO)
らが買い取って新規出店攻勢をかけるそうです。当面はシネ・コンプレックスの中
に出店するようですけど。
五郎:私が駐在員だった頃に店が出始めたかな。またたく間に広がった感じだね。
ソムチャイ:東京ほどはひどくないと思うんですけど、若者たちが「ファーストフード店はかっこ
良い」と思って飲んだり食べたりしてますね。東京にいる頃、マクドナルドに小さい
子供を連れて行って、ハンバーガーとフライドポテトを食べているヤングママを見て、
「こりゃ、日本の将来はどうなるのかな」なんて思ったことありますけど、バンコクで
も同じ現象になりつつあるんです。これで良いんでしょうか?
五郎:日本の場合はね、学校給食と化学調味料が食味をおかしくしたという声があるね。みんなが
同じ味のものを一斉に食べる。ファーストフードに対して抵抗感が無くなってる。サラリー
マンのコンビニ弁当は奥さんの手間を省いたけど、食べ物が「えさ」になって、愛情は無く
なった。若者とオジサンがカウンターに座って、牛丼を4・5分で食べている。最近は
「大戸屋」のような和食ファーストフードが大流行で、中年の婦人が『さば焼き定食』なんか
食べる姿が珍しくない。日本の新しい食の風景だね。
ソムチャイ:バンコクも程なく同じようになるんでしょうか?。・・・、
でもちょっと待ってくださいよ。バンコクの方がもっと先を行ってるかも知れませんよ。
だいたい、バンコクでは台所の無い家が少なくないです。アパートやコンドミニアムには
流しだけで、調理するところが最初から無いというところがむしろ多いんじゃないでしょ
うか。部屋の中で火を使われるのは家主や他の住人にとってリスクが大きいし、第一、
チョット外に出ればおかずを売っている屋台がいっぱいありますから。
五郎:屋台か!なつかしいなア。
良く買いに行ってたからね。私のところはメイドさんがついていなかったから、お世話になった。
今でもあるんだろうな・・・。私の住んでたアパートから3分ほどのところに屋台が10軒
ほど並んでた。おかず屋が3軒、クイティオ屋が1軒、サンドイッチ屋が1軒、コーヒー屋が
1軒、ナムトウフ(豆乳)屋が1軒、焼き鳥屋が1軒、団子屋が1軒、おかゆ屋・・・という
ような配置だったかな、今でもはっきり覚えてる。不定期で出てくる「とうもろこし屋」とか
「デザート屋」もあった。それにセブンイレブンがあったから、間に合わないものは無い。メイ
ドも奥さんも要らなかったな。
ソムチャイ:ビニール袋に入れてもらって家で食べたんですか?
五郎:そういうこと。朝飯なら30バーツか40バーツですんだね。日本円で100円か150円だよ。
朝は6時から開いていて、遅いときは昼の12時近くまでやっている。困ったのは土曜・日曜・
祭日には閉める店が多かったこと。そのときは歩いて10分くらいの屋台街まで買出しだよ。
ソムチャイ:それって、タイ人の典型的な暮らしですよ。五郎さん。
五郎:半分タイ人だったから、そのころは。でもね、今の日本のファーストフードの事情とは少し違
うような気がする。日本の場合は家に台所もあるし、近くのスーパーで買い物もできる。だけど、
奥さんは料理をしなくなってきた。家族で一緒に食事をしなくなった。たまに外食してもみんな
バラバラに注文するから食事で同じものを食べるということはない。親父はカツドン。
子供はハンバーグランチ。お母さんはスパゲッティー。